そもそも交通の便が悪い。定期便が発着する空港はなく、新幹線もない。東京から行くには石川県の小松空港から延々と長距離バスに乗って行くか、金沢や米原などの新幹線駅から在来線を乗り継ぐしかない。北陸にありがちなのだが天候は不安定で、いいお天気だと思っていたらすぐに曇り、いきなり雨が降ってくることも珍しくない。日本海の海岸はかつては関西からの海水浴客で賑わったというのが、明石海峡大橋が開通してからはビーチリゾートは淡路島や四国に奪われて、夏の人出はめっきり減った。冬の越前蟹は今でも人気だが、冬のシーズンだけで一年を乗り切るのは容易ではなく、越前海岸沿いには潰れたホテルや旅館の廃墟が目立つ。
そういう陰々滅々とした風なのだけれど、ところがどっこい、福井の人たちはやたらと明るいのである。
それを見事に裏づけるデータの数々は、本書でも紹介されている。たとえば「福井県は、全国学力調査で小中学校とも学力ではトップレベルであり、小学生の体育テストも同じくトップレベルという教育水準の高さがある。また、住みやすさを見ると、持ち家率で三位、生活保護の受給率の低さで二位である。生活レベルが高いことを意味している」「象徴的なのは、政府の統計による、勤労者世帯の実収入ランキングだろう。二〇一〇年に福井県は一世帯あたり月額平均六十三万四千六百円で、全国一位となった。意外にも大都市の東京が二位なのだ」
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