前回までのあらすじ
エイリアンハンドシンドロームという奇妙な疾患に冒された高校生の岳士。片腕がまるで何者かに乗っ取られたかのように勝手に動くのだ。しかし岳士には、自分が原因で亡くなった兄・海斗が腕に宿っているかのように感じられ、治療を拒絶し家を出る。ところが辿り着いた河川敷で刺殺体を発見し、犯人と目されてしまうことに。仕方なく真犯人を探るうちに、事件の裏に危険ドラッグとそれを売りさばく集団「スネーク」の存在があることを突き止めるも、今度はスネークを張っていた刑事の番田に捕捉され、スパイになるよう持ちかけられる。首尾よくスネーク内部に食い込むが、思いがけず摂取してしまったドラッグにはまり、抜け出せなくなっていく。そんなときにスネークの幹部・ヒロキに呼び出され……。
第十一章
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絶句したまま立ち尽くす岳士に、カズマはゆっくりと近づいてくる。
「なんだよ、幽霊でも見たような顔しやがって」
「いえ……、逮捕されたはずじゃ……」
「ああ、逮捕されたさ。けど釈放されたんだよ」
「釈放……」
岳士はその言葉をただ繰り返すことしかできなかった。
「うちのチームが良い弁護士雇ってくれたし、なにより俺をパクった刑事が適当な取り調べしかしなかったからな」
「でも、逮捕されたときサファイヤを持っていたのに……」
「あの程度のドラッグを持っていただけじゃ、大した罪にはならねえ。検察もそのくらいでずっと勾留して取り調べるほど暇じゃねえんだよ。しかも、あの刑事は逮捕するとき、俺をいきなりぶん投げて怪我をさせやがった。そのことを割り引いて不起訴処分になったらしいな。ありがとうよ、全部お前のおかげだ」
カズマは岳士と肩を組む。
「俺のおかげって……?」
「さすがにドラッグを売りさばいていたってばれたら、この程度じゃ済まなかった。けれど俺が逮捕されたとき、ドラッグを売っていたって証拠をお前が持っていってくれた。なにか分かるだろ?」
促された岳士は、ジーンズのポケットからカズマのスマートフォンを取り出した。カズマはひったくるようにそれを手に取る。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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