本書では武則天の他に、女性リーダーとしてアリエノール、エリザベス一世、エカチェリーナ二世が選ばれています。女性が歴史の表舞台で活躍するときにモデルと仰げる存在がいるとの指摘は、日本の歴史をみるときにも有効です。
本書でも語られているように、わが国の持統天皇にとって武則天がロールモデルであったこと、そして武則天の影響は称徳天皇(=孝謙天皇)にも及んでいることが説かれています。出口さんの持論のひとつに、「世界史から切り離された日本史はそもそも存在しない」というのがあります。いま、出口さんは週刊誌上に日本史講義を連載中で、その一部はすでに刊行されました(『0から学ぶ「日本史」講義 古代篇』文藝春秋)。「世界史の中での日本」が今後どのように語られていくか、大いに楽しみです。
武則天は自らを弥勒菩薩と称し、『大雲経』という経典を活用して、大雲経寺を全国に造営しました。大雲経寺はわが国の国分寺のモデルとなります。武則天の独特な仏教政策のイントロダクションとして、「仏教と国家」を見る上で非常に興味深い視点が提示されています。それはわが国への仏教公伝に関するものです。
周知の通り、仏教は公式には百済からわが国に伝わったのですが、その仏教というのは「最新の技術体系」であったと出口さんは捉えます。仏教文化を専門とする私もこれには強く同意します。とかく教条主義的にみなされがちの仏教ですが、仏教はまずもって文明であったというのが私の考えです。
出口さんはそこで面白い問題を提起します。同盟国といえども最新の技術体系をそうたやすく提供するだろうかと。よほど倭国からの見返りが魅力あるものだったと解する他ない。さて、その見返りとは何であったか。それに関しては本書に譲りましょう。新たな議論が予想されるところです。
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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