ユーラシアの大草原を行き交ったモンゴル系やトルコ系などの遊牧民が世界を揺り動かしたのは事実です。マムルーク朝のエジプトをはじめ、現代人にはこれまでなかなか見えにくかった世界を出口さんは案内してくれるのです。
読者は最初のうちは知らない王朝名や民族名に怖じ気づくかもしれません。あまりに馴染みがないので、読むのを止めようかと逡巡する人もいるかもしれません。しかし、考えてみて下さい。どうしてユーラシア中央部の歴史やイスラムの歴史に関する知識が日本人に欠落しているのかと。
私たちが習った二十世紀型の世界史は、力をつけた西欧列強が十九世紀に準備したものです。西欧中心史観がユーラシア中央部やイスラムを陰に追いやってしまいました。
最近の歴史学は、これまでの世界史の欠陥を明らかにしつつあります。出口さんは最新の研究成果を丹念に読み込み、これまで見えていなかった歴史を穏やかに語ってくれているのです。結果、バイバルスというトルコ系キプチャク人の姿が鮮やかに浮かび上がってくる仕掛けです。
バイバルスと同じく十三世紀を生きたモンゴル帝国のクビライが二番目に挙がっています。モンゴル帝国のクビライと言えば元寇がすぐに思い出されます。日本人にも少しは馴染みがあります。
クビライについても最新の研究成果に基づきながら話が進みます。さながら出口さんから世界史の授業を直接受けている感じがしてきます。クビライが海運・陸運の交易ルートの開拓をやり遂げたこと、大都の建設を果たしたこと、優秀な者であれば異国の者でも重用したこと、経済政策に手腕を発揮したことなどが語られ、クビライが身近に迫ってきます。
短いですが元寇についての言及には多くの人が唸るはずです。
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