書評

何が現実か? 価値観を揺さぶられ霧の中を彷徨うような酩酊感を味わう

文: 末國善己 (文芸評論家)

『死仮面』(折原 一 著)

『死仮面』(折原 一 著)

 二〇一六年に東京銀座のヴァニラ画廊で、ジョン・ウェイン・ゲイシー、ヘンリー・リー・ルーカスと相棒のオーティス・トゥール、セオドア・ロバート・バンディ(通称テッド・バンディ)、ダニエル・ハロルド・ローリング(通称ダニー・ローリング)、チャールズ・ミルズ・マンソンら、連続殺人鬼(シリアルキラー)のアート作品を集めた「シリアルキラー展」が開催された。シリアルキラーの内面があふれ出たかのようなズレたデッサンや奇怪なモチーフは、“負のオーラ”としか表現できないものをまとっているが、目にした者を離さない圧倒的なパワーを秘めていた。そのことは、実際に絵を見た方は納得できるだろう。この展覧会は人気を集め、二〇一七年にはヴァニラ画廊で「シリアルキラー展II」が、二〇一八年には大阪の海岸通ギャラリーCASOでも「シリアルキラー展」が開かれている。

 ちなみに、ジョン・ゲイシーは、ピエロの扮装でチャリティー活動を行う実業家ながら、三三人の少年に性的虐待を加え殺害した。ヘンリー・ルーカスとオーティス・トゥールは、全米を放浪しながら三〇〇人以上(一〇〇〇人とも)を殺している。整った容姿と高いIQを持つテッド・バンディは、言葉巧みに女性を誘い出し三〇人以上を殺害した。ダニー・ローリングは、八人の男女を殺し遺体を損壊、女性の被害者はレイプしていた。チャールズ・ミルズ・マンソンはカルトの指導者で、ロマン・ポランスキー監督の妻シャロン・テートの虐殺など五人の殺害にかかわったとされている。


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死仮面折原 一

定価:本体820円+税発売日:2019年02月08日