「雇われる」働き方は減っていくのか?
──本のタイトルにもなっている「会社員が消える」、つまり「雇われる人間が減っていく」というビジョンについては、どのようにお考えでしょうか。
青野 少なくともサイボウズの中でいえば、「雇う」という感覚はあまりないです。社内で「こんな仕事やりたい人いますか?」「やりたいです」と、仕事と社員を平等な立場でマッチングしている感覚です。
かつてのように人手が余っている時代と、いまの労働力不足の時代では経営者の感覚が逆転している面があります。昔は「俺はリストラしたことがない」と、雇用者の数を誇る経営者がいました。これは雇う側が有利だった時代の言葉でしょう。
ところが、これだけ労働力が不足していて、しかも知的な仕事が増えてくると、逆に経営者のほうが優秀な働き手に頭を下げて、「できれば、もう少しわが社で働いてください」となる。
大内 これまでの工業社会では、経験の長い人やマネージャーといった雇う側が生産に関する情報を持っており、「私が言うとおりにすれば仕事がうまくできますよ。だから指示通りにやりなさい」と言えた。「やりなさい」とは労働法的にいうと、指揮命令する、ということなのです。
ところが技術革新が進んでいくと、雇い主として社員に指揮命令して、「やれ」というのでは、経営上もマイナスになるわけです。というのも、青野社長はともかく、一般的にいえば、先端の情報については現場の若い社員や、その分野のエキスパートのほうが持つようになるからです。となると経営者は、その情報を用いて、どのようなアウトプットしてくれるか、お願いする立場になった。
青野 たしかに。指揮命令するということは、人事権を上司が持っており、「お前は何時間、働け」「この仕事をしろ」と決めることですね。ところがサイボウズでは、人事権を一人一人が持っていて、「何時間、働きたい」とか「どこで働きたい」など働く場所も決める。どういった仕事をしたいのかも自己主張できるので、そこでマッチングが始まる。報酬もメンバーが主張することになっています。つまり人事権が現場へ委譲されていくわけです。そうなると雇用ではないですね。
大内 指揮命令とか、上司と部下といった上下のヒエラルキーではなくて、プロ人材がお互いのスキルを提供しあう働き方になる。仕事の構造が水平化していくわけです。となると経営者の仕事も、それらのスキルをどう組み合わせるかになってきます。つまり経営者の役割が、最新の情報を持っている働き手をマネジメントする、オーガナイズするということになる。すると、それは雇用ではなくて、対等な契約に近くなってきます。これが、雇われるという働き方が減っていく技術的な背景です。
こうした働き方がイメージできないという人がいるとしたら、その業務がいまのテクノロジー進化の潮流に乗れていない可能性がある。早くそれに気づいてほしいですね。
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