個人の力が重要になってくる
青野 そうですね。たとえばITを使いこなせるか否か。それが新たな格差になりえる。
大内 まさにそうで、いま急速に発達しているデジタル化についていけるかどうか、というデジタルデバイドが新しい格差問題になるでしょう。一方で、この本で書いたように、正社員と非正社員の格差は縮小していくでしょう。現時点ではその格差に取り組む必要はありますが、本当に大きな問題は、これから技術革新が一層、進展していくなかで、その潮流に乗れる人/乗れない人、使いこなせる人/使いこなせない人、その格差のほうがよほど深刻ですよ。
青野 本当にそうですよ。私は、インターネットを使った検索を必修科目にしたほうがいいと思っています。漢字を覚えるのも大事でしょうが。最近、なかなか漢字が思いだせなくなりましたが、あまり困ることがない(笑)。
大内 私もそうですよ(笑)。本にも少し書きましたが、学校のテストでも、知識を問う問題は出さなくていい。それよりもインターネットを使って、どのように正解を導き出していくかを問うべきです。それはカンニングではなく、いまの時代に求められている技術です。ネットで検索するときにフェイク情報に引っかからないほうが大事。
青野 そこを教えてほしいですよね。
大内 こうした情報リテラシーこそ義務教育でやるべきですよ。
青野 いいですね。情報格差が埋まれば、格差問題の基本部分は、それで埋まると思いますよ。
大内 そうなると秀才という概念も変わっていくと思います。知識があるだけの秀才には意味がなくなる。ネットを上手く使えばいいわけですから。
こうした基礎的な教育に加えて、今後、より重要になっていくのが職業教育です。これまでは企業に入社して、OJTなどでスキルを教えてもらうことを前提にしていました。私も大学の教員ですが、文科系の学部は職業教育が出来ていないし、逆に求められていなかった。
ところが一人で働くようになるとどうなるか。現在、フリーランスで働いている人は、大企業で働いた経験がある人も多いのですが、将来的には、学卒後、すぐにフリーで働く人が出てくる。ですから職業教育を根本的に考えなおさないといけません。将来は、中学生、あるいは小学校高学年から職業訓練をしてもいい。契約書を自分で作成できなければ自立もできない。ファイナンスもできなければ、やりたいこともできません。
青野 ああ、おもしろいですね。
いまは校長や副校長、教頭だけが民間から登用できるようですが、直接、児童に接する先生たちも民間から登用できるようになればいいですよね。特別ゲストとして近所の魚屋さんに魚の売り方について話してもらうのも立派な職業教育です。
大内 そうですよ。ただ現在の文部科学省の教育体制を維持しながらだと、将来に備えた職業教育をしようにも限界がある。難しいのは承知していますが、そこを変革しないと、将来的に日本はダメになると思います。
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