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「上下」から「水平」に

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──会社員は消え、個人が連帯して働く時代がやってくる


ジャンル : #小説

「企業中心社会」から「個人中心社会」へ

『会社員が消える』大内伸哉 著

──「大企業がなくなる」というビジョンについて、どうお考えなのでしょうか。

青野 私が関心を払っているのは、「大企業」「中小企業」といった企業規模ではなく、「企業」という組織の枠です。この枠に意味がなくなっていくのではないでしょうか。
実際、いまのサイボウズの従業員数を示すことが難しくなっています。というのも従業員の中には、正社員だけど週3日といったフルタイムではない人が相当数いる。こうした人を「社員1」と数えていいのか。逆に外部から来ているのにフルコミットの人もいる。この人は「社員1」と数えなくていいのか。
 この「従業員が数えられない」という状況が示しているのは、サイボウズという企業が、どこまでサイボウズなのか境界がぼやけているということです。だからサイボウズが大企業なのか分からない。これが私のイメージしている企業組織の未来図です。

大内 従業員の数に意味がなくなっていくと私も思います。事業を成功させるための企業構造が垂直型ではなくなり、水平に広がっていく。これは青野社長がおっしゃる未来図と近いように思います。個々の組織は小規模だけど、それぞれ役割を分担している。それら関連組織まで含めて区切れば大企業、という組織はあるでしょう。
 ただ、スケールメリットを追求して人を次々に取り込み、多くの会社員が、ひとつの指揮命令で動くという垂直型の企業組織はなくなっていく。そこが重要なのです。

青野 そうですね。横に広がっていくイメージ。組織同士が横でつながったとき、どこまでを、ひとつの「企業」というか、領域をはっきりさせることには意味がなくなる。会社法で定義されている「企業」に重きを置く必要はないのです。広く見れば大きくつながっているし、細かくみれば小さくつながっている、と。そうした環境で、みんながつながり、楽しく働ければ、それでいい。
 この本で「企業中心社会から個人中心社会へ」と書かれています。企業などの法人は目に見えない概念でしかありません。カッパみたいなものですよ。企業は実在しないのですから、それが大事だというのが、まずおかしい。法人中心ではなく、そこにいる一人一人の個人を見たほうがいい。

 

大内 その通りですよ。法人はフィクションですから。構成しているのは人間であり、それぞれの個人です。法人がダメというわけではありませんが、これからの社会は個人ベースでなければやっていけない。技術がどんどん発達していくわけですから、その技術を個人がどう駆使して、力を発揮するかが重要です。
 法人というフィクショナルな存在が情報を獲得して、個人を組織の歯車として働かせるという方法論では、もう稼げなくなっている。だから否が応でも法人の役割が縮小せざるをえなくなって、本来の個人の役割が重要になっていく。ただし、個人がその力を発揮できるかどうかは、その個人の問題ですよ。

【次ページ 個人の力が重要になってくる】

文春新書
会社員が消える
働き方の未来図
大内伸哉

定価:968円(税込)発売日:2019年02月20日

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