『ニューヨークの魔法は終わらない』(岡田光世 著)

 グラフィティの壁をきっかけにふたりのニューヨークキッズが、そして、愛は憎しみに勝(まさ)るという言葉を見て通りすがりの女性が、それぞれ私に語った思いもかけない物語。

 これからページを繰(く)って、この人たちに会ってみてほしい。

 日々のなにげない暮らしのなかで、人の心と心が触れ合い、ふわっと温かくなる瞬間が、この大都会ニューヨークにはあふれている。その瞬間を、私は「魔法」と呼ぶ。

 そこで語られるのがたとえ涙の物語であったとしても、涙をふいたあと、人っていいな、とスキップしたくなる。

 地下鉄やストリートだけではない。観光名所もこの本の舞台になっている。

 メトロポリタン美術館、オペラハウス、タイムズスクエア、セントラルパーク、ブルーノート、グラウンドゼロ、テレビ・スタジオ、ブルックリン・ブルワリー、マディソン・スクエア・ガーデン──。

 ニューヨークのあちこちから、人の息づかいと会話が聞こえてくる。

 今日もどこかで、出会いがある。見知らぬ人同士が踊っている。

 この本にも、とっておきの魔法がつまっている。

岡田光世