それに続いて、防衛庁幹部による汚職事件が明るみに出た。業者との癒着どころか、業者を指導して不正を働いたといっていい。それがしかも、組織ぐるみで恒常的に行われていたというのだから驚く。「テポドン」の脅威に晒されている頃、防衛庁幹部は私腹を肥やすことに精を出していたわけだ。
それ以上に一読者として驚いたのは、連載中のこの小説にこれらの大事件が、ほとんどリアルタイムに取り入れられ、物語の重要な筋として描かれていることだ。あたかもこういう事件がいずれ起こるであろうと予測していたかのごとく、当然のことのように盛り込まれている。「バッジシステム(自動警戒管制組織)」なども、それまでは知識がなかったはずのことを、さも精通しているように書いてある。この辺になってくると、著者の僕自身どうしてそうなったのか、よく分からない。天の啓示というけれど、まさに神がかり的としか言いようがない。さらにこの時点で、四年後の二〇〇三年夏の国会に提出され、成立した「有事法」のことを示唆している。(一旦緩急あれば、好むと好まざるとにかかわらず、国防が最優先事項として、国政の頂点に立つことになる。/問題は国民の覚悟のほどだ。「有事」のときに和戦いずれを選ぶかも、その結果への覚悟がなければ、国防を論じる資格はない。)
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