- 2019.06.01
- レポート
六代豊竹呂太夫さん×大島真寿美さんによる文楽『妹背山婦女庭訓』特別鑑賞会が国立劇場で開かれました。
「オール讀物」編集部
『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』刊行記念
ジャンル :
#歴史・時代小説
小説『渦』はどこから生まれたのか?
作家の大島真寿美さんの『渦 妹背山婦女庭訓 魂結び』の刊行を記念し、六代豊竹呂太夫師匠をお招きした文楽特別鑑賞会が、5月17日(金)、東京国立劇場で開催されました。
快晴に恵まれた当日、国立劇場に隣接する伝統芸能情報館3階のレクチャー室での大島さんと呂太夫さんのトークショーからイベントはスタート。
まず、司会者が浄瑠璃作者・近松半二を主人公にした、本作品執筆のきっかけを訊ねると、「もともとは担当編集者から歌舞伎を題材した作品を依頼されていたんです。昔から歌舞伎は好きで、平成中村座の浅草公演で『妹背山婦女庭訓』を観た時、この題材の着想を得て、その後、文楽でも『妹背山』を体験することになりました。その時に主役のお三輪ちゃんが私の身体の中に入ってきて、もうこれで書けると思ってしまいました」と語り、専門家や技芸員の方々にもレクチャーを受け、今年3月の小説『渦』刊行にいたった経緯をお話くださいました。
執筆中に発声教室を体験したことがきっかけで、太夫の豊竹呂太夫さんに弟子入りし、現在も大阪でのお稽古を続けているとか。呂太夫師匠に小説『渦』の魅力を聞くと、「何といっても主人公の近松半二と親友の歌舞伎作者・並木正三らが、まるで自分の友達か何かに思えてくるほど、生き生きと描かれていること」で、二人が酒を酌み交わす場面に大いに驚かれたそうです。
大島さんによれば、実は半二と正三の交友は史実には残されておらず、ご自身の小説としての創作部分。逆にそれ以外の大半は、大量の資料から見つけ出した事実をベースに物語は進んでいるそうです。参加者の皆さまからの活発なご質問もあり、『渦』創作の裏側が次々と明かされていきました。