本の世界に一気に惹き込まれた
そんな僕が、本を読むようになったきっかけは、高校卒業後に入学した映画学校の先輩でした。当時、映画監督を目指していて、日本映画学校(現・日本映画大学)に通っていたんです。そこに大変お世話になった先輩がいました。
あるとき、その先輩に「お前、小説を読まないの。あんなに面白いのに」と言われました。そのとき試しに貸してもらったのが、大沢在昌先生の『ウォームハート コールドボディ』。この小説は、僕がいままでイメージしていた文学の定義を完全に破壊したんです。交通事故で死んだ主人公の男は、謎の実験で液体を注入されたことで不死身になり、武器密輸組織と戦うというストーリー。嘘だろ、と思ったんです。だって、教科書に載っている小説と違う、なんじゃこりゃって、一気に惹き込まれました。
で、先輩に何を読めばいいか、聞いたんです。そしたら、「何を読んでいいかなんて、俺の知ったことじゃない」と。「失敗したら嫌じゃないですか」と聞いたら、先輩は「失敗って何? お前、映画見てつまらないと思うときあるじゃん。でもさ、つまらない映画のなかにだって面白さもあるじゃないか。自分がつまらないって知ることは大事だろう」という話をされました。
もし皆さんが誰かに「本って何が面白いの?」と聞かれたら、「勉強になる」とは言わないでほしい。いかに楽しいか面白いかを話してください。
いま、三省堂書店池袋本店さんのフェアでオススメしている小説もバラエティーに富んでいます。面白いと感じるものもあれば、つまんないと思うかもしれない。でも、自分がつまらないからといって、駄作じゃない。いまの自分にあわなかっただけなんです。時間が経ったら、めちゃくちゃ面白く感じるかもしれない。
これは私の経験です。夏目漱石の「こころ」は、高校時代に教科書に載った抜粋を読んだとき、全然面白くなかった。でも、いま読むと面白いんですよ。そのときの自分の経験や気持ちが色濃く反映されるのが、読書ですね。
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。