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新版のための訳者あとがき(のようなもの)『デカルトからベイトソンへ──世界の再魔術化』 モリス・バーマン 著/ 柴田元幸 訳

新版のための訳者あとがき(のようなもの)『デカルトからベイトソンへ──世界の再魔術化』 モリス・バーマン 著/ 柴田元幸 訳

文:柴田元幸 (翻訳家)


ジャンル : #ノンフィクション

『デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化』(モリス・バーマン 著/ 柴田元幸 訳)

 たとえばポランニーの「暗黙知」を論じた、「西洋の伝統的な知のモデルは、経験から自己を引き離すことによって、知識が得られるとする。だが、この例〔はじめはシミにしか見えないX線写真の像が次第に焦点を結び肺が見え症状が見えてくるという例〕では、経験のなかに自分を埋没させるまでは、X線写真が意味を帯びてこない。自分というものが忘れられ、独立した『知る主体』がX線のシミのなかに溶け込むことによって、シミが意味あるものに見えてくるのである。ギリシャ人の言う『一体化(ミメーシス)』、すなわち肉感的で詩的で官能的同一化が、この学習の核心なのだ」という一節など、まさに僕がいつもお題目のごとく唱えている「原文に耳を澄ます」「頭でなく、体で訳す」といった物言いをずっとソフィスティケートさせた陳述に思える。その意味で、僕としては何も考えずにただただ好きで翻訳してきただけだけれども、それはそれで、西洋近代を乗りこえる企てだったのかなあと呑気に思ったりもする。

 もっとも、〈最大化〉ではなく〈最適化〉を、というこの本のもうひとつの大事な主張については、どこまで吸収・活用できたか。なんだかやりたいことを手当たり次第にやるばかりで、ひたすら〈最大化〉しかやってこなかった気もする……まあまだ人生が終わったわけではないので、今後は〈最適化〉をゆるやかな目標に掲げようという気にいまはなっている。

単行本
デカルトからベイトソンへ
――世界の再魔術化
モリス・バーマン 柴田元幸

定価:4,180円(税込)発売日:2019年07月25日

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