
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全てはⅰから始まる。
ⅰは最初の記号である。
ⅰは私の記号である。
ⅰは虚構の記号である。
ⅰは何よりもまず、ここに描かれる虚構を示している。
ⅰ。その記号が置かれる想像上の場所。その空間に交点は存在しない。ⅰとⅰにより引かれた線が、その他の線と交わることは決してない。
その空間において、空白は、つねにすでにあらゆる座標に存在する。
私は私と触れ合うことはない。五秒前の私、五秒後の私、それから今の私。それらの私がこの私と交わることは決してない。私は私と関係していない。
鏡の中を覗きこむこと。それは、全ての私を他者へと変えていく営みだ。私は名を持たない。私は変わってゆく。私は失われる。
私は名もなきⅰ、失われたⅰ、単なるⅰだ。
やがて全てがⅰになるだろう。
――バラード・ホブランド「瞬きと瞬き」のためのメモ
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