特集

『Orga(ni)sm』キーワードをめぐるよもやま話 #1

文: サイモン辻本(辻本力),ガーファンクル(編集部)

文學界10月号 <阿部和重『Orga(ni)sm』を体験せよ>

『オーガ(ニ)ズム』(阿部和重 著)

死にかけのアメリカ

 サイモン辻本(S) 神町トリロジー最終作『Orga(ni)sm』は、音楽や映画に関する固有名詞が大量にちりばめられてるのが特徴だよね。

 ガーファンクル(G) 大作やヒット作もあれば、マイナーな知る人ぞ知る作品もあって、めちゃ幅広い。本作は、主人公=阿部和重なわけだけど、音楽や映画が、彼の置かれている状況や気分を表現する形容詞のように使われたり、あるいは引用のような形で登場したりする。

 S 連想ゲームっぽいのも多いよね。「寂しい」という気持ちを吐露する際に、ボビー・ヴィントンの「ミスター・ロンリー」、鈴木聖美 with RATS&STARの「ロンリー・チャップリン」が出てきたり。

 G そうしたワードは漠然とその場のノリで出てくるとも限らなくて、非常に有機的(オーガニック)に、物語にとって意味のある形で配置されてもいるから油断ならないんだよねー。小説全体を貫くテーマを、音楽や映画で指し示しているというか。

 S 映画の話題にしても、タイトルとかの情報なしに、いきなり登場人物の名前だけ出てきちゃったりする。もちろん、そうした固有名詞を知らずに読み飛ばしちゃうことは可能なんだけど、とはいえ、知ってればより小説を楽しめるのも事実。というわけで、『Orga(ni)sm』に出てくる音楽や映画を肴にいろいろダベっていきたいなぁと。そうそう、Spotifyにこの小説に登場する曲のプレイリスト〈Music from Orga(ni)sm〉を作ったんで、読書のお供にどうぞ。

 G あ、一部物語の核心に触れるようなところもあるので、ネタバレがイヤな人はあとで読んでね。まずは音楽ネタから。冒頭、いきなりヴァン・モリソンの「スリム・スロウ・スライダー」の歌詞の引用から始まる。

文學界 10月号

2019年10月号 / 9月6日発売
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オーガ(ニ)ズム阿部和重

定価:本体2,400円+税発売日:2019年09月26日


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