人間最後の楽しみはやっぱり食べ物
近藤 山の上ホテルの頃、先生に「僕、何歳に見える?」って聞かれたことがありました。僕は七十歳ですか、って思ったままに答えました。当時、先生は五十八歳だったんです。
逢坂 池波さんは貫禄があって、ふけて見えましたからね。
近藤 そんなことがあって山の上ホテルの社長には「もう、おいでにならないと思う」って言いました。でも、それから一週間ほどしたら、ニコニコしてお店に入ってきた。このとき、先生と僕の距離が一気に縮まったような気がしました。以来、僕はこの人には絶対、頭上がんない、と思いました。この人のいうことは全部聞いてあげたいと。
逢坂 池波さんは、情実や利益を求めて擦り寄ってくるような人は、退けた人だったけど、率直な人は受け入れる人でしたよ。
近藤 独立を考えたとき、先生に相談しました。お手紙もいただきました。
逢坂 そしたら独立しろ、って言われた?
近藤 いえ。先生は山の上ホテルのほうにも気を遣われますから。「最終的な判断は、近藤君自身で決めなさい」って。でも手紙に「僕も四十になって作家になった。でも、それは自分にとって非常によかった。迷わず専念してきたから、今の自分がある」というような内容が書かれていて。これを読んで、やっぱり初心を貫くべきだと思いました。先生に肩をポンと押してもらったような気がしたんです。
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