逢坂 しかもほとんどが大筋とはまったく関係なく、それだけのファンもいるなんて、大変なものです。登場人物が口にする江戸の食べ物は本当においしそう。
近藤 私は小説の中で池波先生がお書きになっている料理を実際に作って再現している。昨日もある番組で「牡蠣と生のりの生姜和え」というのを作った。生牡蠣といったら、普通、レモンを絞って食べるでしょう。剣客商売に出てくるこの料理は、生牡蠣を酢水で洗って、生海苔と生姜を混ぜるというもの。磯の香りと海の塩味、そこにピリッとする生姜が見事に調和する。単純なんだけど、あれほど素晴らしい料理はないと思います。
逢坂 シンプル・イズ・ベストというけど、何事でもそうですね。手を加えれば加えるほど、複雑になればなるほど、本来の姿から遠ざかるような気がする。小説もクドクド書かず、池波さんのようにスッと書くほうがいい。読み手は簡潔な言葉の行間を読み、想像力をかきたてる。私はだいたい調べてたくさん書くのが好きなほうだから……。あの域に達するのに私なんか、まだ十年か二十年はかかりそうです。
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