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特別対談 池波先生に教えられたこと 近藤文夫×逢坂剛

特別対談 池波先生に教えられたこと 近藤文夫×逢坂剛

近藤文夫 ,逢坂 剛

『闇の平蔵』(逢坂 剛 著)

出典 : #文春文庫

『闇の平蔵』(逢坂 剛 著)

 逢坂 どうりでさっき食べたの、すごく瑞々(みずみず)しくて。香りもよかった。でも、素材に衣をつけて油の中に入れるとき、無造作に放り込んでいるようにみえましたが……。

 近藤 それが近藤流。あえてピシャン、ピシャンって放り込むことで、余分な衣を取っている。だから天ぷらがドテッとしないでしょう。うちの天ぷらはたくさん食べても胸焼けしません。

 逢坂 僕もただ放り投げているんじゃないとは思ったけど、すべてにちゃんと理由があるんだね。カウンターは満席なのに、みんなの前に天ぷらが出てくるタイミングも絶妙。

 近藤 食べるペースは早い人も遅い人もいる。そういうのを全部頭に入れながら揚げていく。

 逢坂 あのさつま芋の天ぷらなんかは、いろいろ試行錯誤して作り上げたものなんでしょうね。

 近藤 揚がったときの状態は全部頭の中で考える。試しに揚げたり、刺したりしなくてもいい。こうやると、こうなるって、イメージどおりのものができます。

 逢坂 池波さんの小説みたいですね。池波さんはだいたい、筋考えないで書き出す。それで話がちゃんとできちゃう。

 近藤 そして先生の小説には必ず食べ物が出てくる。『鬼平犯科帳』『藤枝梅安』『剣客商売』……。

文春文庫
闇の平蔵
逢坂剛

定価:792円(税込)発売日:2019年10月09日

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