2008年に『一朝の夢』で松本清張賞を受賞し、単行本デビューした梶よう子さん。朝顔栽培が生きがいの同心・中根興三郎を主人公にした同作は好評を博し、前日譚となる『夢の花、咲く』も上梓した。
最新作『菊花の仇討ち』は、久々にその“朝顔同心”が主人公の物語だ。
――“朝顔同心”こと中根興三郎が登場する作品は、8年ぶりです。久しぶりにお書きになったご感想は?
梶 懐かしかったです。でも興三郎にはスッと入れて、考えたり、おさらいする必要はなかったです。デビュー作だから思い入れがあるというより、そもそも興三郎は自分がこういう人が好きだな、と思って書いたキャラクターでしたから。草食系でオタク、好きなことに没頭して周りが見えない。でもそんな彼が好きで、だから久しぶりでも苦労なく書けるんですね。
――過去2作は長編でしたが、今回は連作形式です。違いはありましたか。
梶 1作目は賞への応募、2作目は新聞連載でしたが、今回は雑誌に読切短編を発表する形で連作になりました。形式以上に大きな違いは、前2作はそれぞれ、「桜田門外の変」と「安政の大地震」という歴史的出来事を背景に、事実に絡める形で興三郎をはじめフィクションの人物たちを描いていたことです。今回は一話一話が短編ということもあって、歴史的事件ではなく興三郎の日常を描くことになりました。悲劇的な事件をベースにすると、ひりひりする、追い詰められた感じになる。短編では、興三郎は日常をこんなふうに生きていたんだ、と読者の方にも楽しんでいただきたいですね。
ただ、ほんとはもっと朝顔のうんちくを語らせたかったのに(笑)、枚数の関係でそれがしにくかったかな。
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