━━7月に刊行された新刊『赤い風』は、五代将軍綱吉の時代に、川越藩が、不毛の土地を畑地に開拓する物語です。後に日本農業遺産に認定された、埼玉の三富新田に着目されたきっかけを教えてください。
「ある編集者から、川越に面白い畑があると聞き、早速調べてみたら、それが『三富新田』だったんです。痩せて何も農作物が採れず、赤土がまじった“赤い風”が吹く荒涼たる土地。それを作物豊富な畑地に開拓し、しかも十代以上にわたってその農法を守っている人々がいる━━世界規模で砂漠化が進む中、これを作品にすることは、意義があると思いました。
しかも、この開拓を指示したのは、当時の藩主・柳沢吉保(当時は保明)です。吉保といえば、綱吉にべったりで成り上がったというイメージが強いですよね。もちろん、藩主として手柄がほしくて、開拓を思いついた面もあると思います。でも、地元の人にとって吉保は名君であり、三富新田がある三芳町のお祭では吉保人形を載せた山車があるほどです。そんな吉保の一面にも興味がそそられました」
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