――舞台は『一朝の夢』の前になりますが、『一朝の夢』に登場した三好貫一郎(=関鉄之介。水戸藩士で桜田門外の変の実行犯)がこの作品でも出てきましたね。
梶 過去2作を読んでいただいた方に、「えっ!」と思ってもらいたかったんです。時系列的には、『一朝の夢』がいちばん手前で安政7年、第2作の『夢の花~』が安政2年で、今回はその1年後の設定です。でも発表順に読んでもらってもいいですし、この作品が初めてでもいい。エピソードが前後する、「スター・ウォーズ」方式ですね(笑)。
――作品のあちこちに、前作で起きた大地震の傷跡が出てくるのも印象的です。
梶 じつは『夢の花~』を連載中に東日本大震災が起きて物語が現実とシンクロしてしまい、書くのがしんどかったんです。だから今回は大地震の後の設定にして、江戸の復興を興三郎の視線や朝顔の花を通して描きたかった。花は趣味のもので、大災害の後、復興優先の時には後回しにされがちです。でもその花の栽培ができるということは、すなわち余裕があるということで、少しずつでも復興が進んでいることの象徴になると思いました。
――植木屋の娘・おみねの出番が多く、彼女の幼馴染みのお徳も出てきて彩りを添えました。
梶 興三郎本人は恋愛とは縁遠いんですが……。短編だったので、より身近な人を救ったり、守ったりすることになりました。彼にしかできない形で――ふだんはぼーっとしてるし、大きいこと、派手なことはできないけど、周りをほんわかさせることができる。やる時にはやる、でも花に絡んでないとしない、それが興三郎です(笑)。
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