――取材で笠岡市に行かれて、どのような印象をお持ちですか。
伊東 笠岡には学生時代、その親友の自宅があったので卒業旅行で行きました。執筆にあたって今回は、2016年と18年の2度、訪ねました。約35年ぶりですね。笠岡が風情のある港町だという印象は、22歳の時とあまり変わっていませんでした。
16年には真鍋島をはじめとした島々へ、18年には北木島に連れていってもらいましたが、共に瀬戸内海の美しさを満喫できる素晴らしい島でした。真鍋島には『瀬戸内少年野球団』の撮影に使った校舎が残っていました。北木島にある石切り場の絶壁は凄かったです。
――世話物は多くの作家が手がけ、作品数も多いです。いわばライバルが多いですが、初めて書くにあたってどんなことに気をつけられましたか。
伊東 世話物といえば、われわれの世代は平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』です。今回、改めて『御宿かわせみ』を読み込んで、いろいろ参考にさせていただきました。
たとえば、当然ながらメインのキャラクターは親しみやすいものにし、おなじみメンバーとの和気あいあいとした雰囲気を出す。極端な悪役は出さない。恋愛感情の描写は一歩踏み込むけれど、怒り、憎悪、嫉妬といった負の感情はあまり描かない。風景描写は繊細に、季節感を大切にする。そして悲劇で終わらせず、後味のいい希望の持てるラストにする、などです。
ただ、こういったことを意識して書くだけでは二番煎じになります。そこで物語のラストへの盛り上げに注力しました。世話物であっても、「みんな幸せ。よかったね」という予定調和的なものではない、力強い物語が紡げたと思います。
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