――時代背景は伊東さんが何度も書いてこられた幕末から明治維新ですが、この時代を選んだ理由は何ですか。
伊東 これまでは有名な人物の視点で幕末や明治維新を書いてきましたが、庶民視点でこの時代を描いたことはありませんでした。それで、遠景としての「激動の時代」を書きたいというのも、執筆動機の一つでした。時代の大きな荒波に翻弄されながらも、決して覆らない笹船のような主人公の生き方に共感していただければ幸いです。
――主な登場人物は共通するものの、各短編はバラエティに富んでいますね。
伊東 読者に「同じような話」という印象を持たれないよう、一編一編どう趣向を凝らすかで苦心しました。「触書の男」はライトミステリー、「追跡者」はスペクタクル、「石切りの島」は冒険物、「迎え船」は密室サスペンス、「切り放ち」は恋愛物、そして「紅色の折り鶴」は私の得意な歴史解釈物という感じで、様々なジャンルの作品が楽しめるようにしました。複数の作品で、どんでん返しも用意されています。
――そんな中で「追跡者」だけは、実在の人物の河井継之助が出てきます。
伊東 そうです。「追跡者」だけは、知っている人が出てくる歴史小説テイストを漂わせることで、これまでのファンの方にも安心して読んでいただけるのではないかと思いました。
――舞台の笠岡は瀬戸内海に臨む港町。穏やかな海が広がる光景が目に浮かびます。
伊東 そう思っていただけると嬉しいです。作品を書く前のプロット作成段階では、映像化という前提に囚われてしまうとよくないので意識しないようにしていますが、本作を書いていくうちに様々なイメージが浮かび上がり、映像化されたものを見てみたいと思うようになりました。
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