- 2019.12.02
- インタビュー・対談
〈佐々木譲 新人賞受賞40周年インタビュー〉書くことは、変わり続けること
「オール讀物」編集部
オール讀物新人賞『鉄騎兵、跳んだ』から40年の日々
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
自分らしい警察小説を
──そこからさらに警察小説へと筆を進めていったきっかけは何ですか。
もともと私はエド・マクベインの「87分署」シリーズや『笑う警官』の「マルティン・ベック」シリーズの大ファンですから、いつか自分らしい警察小説を書きたいという気持ちを持っていました。
一番のきっかけは2002年、『ユニット』(03年)という少年犯罪を扱った小説を連載するにあたり、警察組織をきちっと描こうと北海道警の取材を始めたことです。すると、当時はまだ発覚していなかった稲葉警部事件(02年、道警の稲葉圭昭警部が覚醒剤使用、営利目的所持、拳銃不法所持の容疑で逮捕された)の噂を聞いた。そんなことが本当にあるんだろうかと半信半疑でいるうち、次々に事件が明るみに出てきたから驚きました。ちょうどその頃、角川春樹社長から「警察小説をやらないか」と言われていたので、稲葉事件を踏まえて『うたう警官』(04年)を書きました。
稲葉事件とは、裏金作りや、泳がせ捜査、やらせの拳銃摘発など、日本の警察組織が抱える構造的病巣を、現場の捜査員ひとりに押しつけて隠蔽しようとした、いわば作られた事件です。その組織のひどさを間近で見聞きした私は、警察の組織上の問題、また、体質的な問題を、「警察組織vs.現場の警察官」という図式で描くことに一番のドラマがあると気づいたのです。それこそが私らしい警察小説だと。
何より現場の警察官は、物語の主人公として魅力的でもありました。それで『制服捜査』(06年)、『警官の血』(07年)を書き、『廃墟に乞う』(09年)で直木賞をいただくことになります。
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