- 2019.12.02
- インタビュー・対談
〈佐々木譲 新人賞受賞40周年インタビュー〉書くことは、変わり続けること
「オール讀物」編集部
オール讀物新人賞『鉄騎兵、跳んだ』から40年の日々
出典 : #オール讀物
ジャンル :
#エンタメ・ミステリ
知らない世界に貪欲であれ
──いっぽうまもなく刊行される『抵抗都市』の舞台は、日露戦争に負け、ロシアの属国になったいわば架空の日本です。現在「オール讀物」で連載中の『帝国の弔砲』も、同様の歴史を前提とした「歴史改変SF」ですね。警察小説に続いて、ついにSFまでお書きになるのかと驚きました。
3~4年前から、日本という国の“終わり”が見えた感じがしているんです。SFは、現代小説以上に現実に対して批評性をもちます。SFには「終末もの」という分野がありますが、今や“終末”が現実のものになりつつある。その危機感を書き留めておきたくて、SFに挑戦しています。
84年、国際ペン大会のゲストとしてカート・ヴォネガットが来日し、こう語りました。「作家は戦争を止めることはできない。でも、社会に異変が起こる時、いち早くそれを感じ取り、“炭鉱のカナリア”として啼くことはできる」と。今、自分がSFを書くのは、炭鉱のカナリアになりたいからです。つまり『抵抗都市』や『帝国の弔砲』は日露戦争前後の時代を舞台にしているけれども、そこで私が描こうとしているのは、近未来の日本の姿、明日の日本の姿なのです。
2年前、日本ミステリー文学大賞の授賞式で、集まってくれた編集者に「SFを書きたい」と告白し、「佐々木譲4・0になりたい」と言いました。青春小説が1・0としたら、ハードボイルド・冒険小説が2・0、歴史小説が3・0。警察小説をハードボイルドに含めれば、SFは「佐々木譲4・0」であると。でも、よくよく考えたら警察小説は4・0だから、SFは「佐々木譲5・0」ということになります。しばらくは「佐々木譲5・0」として書いていきますよ。
──40年を振り返ると、佐々木さんが長く書き続けてこられた秘訣は、「変わり続けること」のように見えます。
私はそうやってきたというだけでね。エド・マクベインは「87分署」シリーズを50年にわたって書きました。1つのものをずっと書いていくという道も、当然、作家にはありえます。私の場合、次々に書きたいジャンルが出てきて、幸運にもそれを書かせてもらえたということだと思っています。
──小説を書きたい人に向けて、何かアドバイスはありますか。
自分のことを言うと口幅ったいけれども、私自身、29歳の若さでデビューし、書いていけたのには、それまでに多くの本を読み、多くの映画を観ていたことが大きかったと思います。今、書こうとしているSFだって、高校時代から「SFマガジン」を愛読してきた蓄積がある(笑)。本、舞台、映画、何でもいいので、若い人には、知らない世界に意図的に手をのばす貪欲さを持ってほしいと思います。
そして、デビューできた方には、かつて自分が編集者に言われた言葉を贈りたい。「会社を辞めないでね」って(笑)。
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