ネットで友情を育もうとする子どもたち
ネットで人とつながろうとするのは、氷上をあてもなく滑り続けるスケートのようなものです。ネットのヘビーユーザーは孤独なスケーターなのでしょう。
人は孤独を意識すると、他者とつながろうという願望が強くなります。現在のような「つながり」「絆」が連呼される世の中というのは、じつはその裏に、孤独感が満ちているということかもしれません。
ネットでゲームやSNSに依存してしまうのは、若い世代、それも一〇代が多いといいます。彼らはどの世代よりも孤独なのでしょうか?
私はこう考えています。赤ん坊は一人の「個」として生まれてきます。しかしか弱い存在は、他者の全面的な保護がなければ生きていけません。最初に子どもを守るのは、たいていは母親です。もちろん父親であっても、他のだれであってもいいのですが、子どもにはまず命を安心してゆだねて、発したことばを受け止めてくれる大人が必要です。その一対一の基本となる関係からスタートして、徐々にその子の人間関係は家族全体へと広がっていきます。
安定した家族関係のなかで成長すると、子どもは家庭以外の場面でも人間関係を構築しなければならない時期に入ります。他者との「つながり」を新たにつくらなければならないわけです。その場が学校です。
人生のなかで一〇代とは、家庭を基盤として外部の世界へ、おもに学校という場へ活動を移行し、そこで新しい人間関係をつくる時期にあたります。しかし学校に通えば人間関係が自然にできるというものではない。新しい環境の中で自力で他者との関係を築いていく必要があります。
スマホでSNSなどのソーシャルメディアに、毎日、五時間、六時間とアクセスし続ける高校生が問題になっていますが、彼らは家庭を出て、外への「つながり」をつくろうと奮闘しているわけです。しかし、ネットだけでは安定した確固たる人間関係をつくることはきわめて困難です。そんななかで不安を感じて依存的に長時間のアクセスを続けてしまう。しかしいくら長い時間をかけても、たしかな人との「つながり」をネットだけで確立するのはむずかしい。
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