「現時点のベスト、最高傑作にする覚悟で臨みます。そうじゃないと大ヤケドする小説だから」
新連載にかける意気込みをそう語る真藤順丈さん。「ずぬけて面白い、エンターテインメントの王道」を書きたいと考えたときに浮かび上がってきたのが、あるアイデアだった。
「音楽だとトリビュート・アルバムがあって名盤も多いんですが、文芸にももっとトリビュート作品やパスティーシュがあっていいんじゃないかと思ってました。最近、新訳とか新釈が盛んですが、もっと踏み込んで『神州纐纈城』のような未完の小説の続篇や、本腰を入れた近代文学のトリビュートがあったら読みたい。奥泉光や京極夏彦がやってくれないかな……やらないか、それなら俺がやっちゃおう、そして怒られよう! というのがこの連載の主旨です」
舞台は一九二三年、関東大震災で壊滅した東京を走り抜ける一人の快男児。流言蜚語で暴行される朝鮮人をかばって袋叩き寸前の彼に、救いに現れた老翁が呼びかける。
「坊っちゃん、あなたを探しだすのも骨が折れた」
そう、彼は夏目漱石『坊つちゃん』の主人公なのだ。老翁は本邦物語の祖とされる『竹取物語』の“翁”であり、他にも川端康成『伊豆の踊子』、泉鏡花『高野聖』など近代文学からも有名どころが続々登場する。つまり、これから始まるのはなんと、日本の文学史を彩るキャラクターたちの豪華競演による冒険活劇!
こちらもおすすめ