書評

過激で過剰、痛快で悲惨……とにかく無類に面白い! 予測不能のジェットコースター小説

文: 金原 瑞人 (翻訳家)

『番犬は庭を守る』(岩井 俊二)

『番犬は庭を守る』(岩井 俊二)

 あまりに過激な作品、あまりに過剰な作品。あまりに痛快で、あまりに悲惨で、あまりに、どういっていいかわからない作品。あまりにあまりな作品。

 読むうちに想像力のたががはずれてしまいそうになる作品。そう、おそらく、これがいちばんうまくこの作品の特徴をとらえていると思う。

 こんなふうに始めると、びびって読まなくなる人もいるかもしれないので、ひとつだけまず書いておくと、何より、無類に面白い。

 そう面白いのだ。話が面白い、展開が面白い、予測がつかない、予想は裏切られる、裏切られるけど、次のページを開くと、読者の予想の二倍、いや三倍くらい面白い地平が広がっている。

 そもそもこの物語の舞台が思いきり差別的で過激で、そこがいやおうなく魅力的だ。その国では廃炉になっていた六十基ほどの原子力発電所が次々に臨界を起こして爆発し、放射能汚染による被害者、犠牲者があふれていた。主人公の青年ウマソーは性器が大きくならないまま成長し、精子はといえば奇形で、それも精液の中をポツリポツリと泳いでいる程度。一般に「小便小僧」と呼ばれる劣等な人々のひとりだった。

番犬は庭を守る岩井俊二

定価:本体740円+税発売日:2020年01月04日


 こちらもおすすめ
特集佐藤良明氏による紹介 『デカルトからベイトソンへ――世界の再魔術化』 モリス・バーマン 著/ 柴田元幸 訳(2019.07.29)
特集「面白すぎて3回読み返した!」 知念実希人『レフトハンド・ブラザーフッド』に届いた全国の書店員さんの声(2019.03.30)
書評高放射能汚染地域〈ゾーン〉をめぐる文学実践。計り知れないほど深くて広い田口ランディの紡ぐ世界(2016.01.27)
書評危機を克服して活かすための大切な原則(2016.01.19)
書評ろくでもない世界における『デブを捨てに』のスゴイ効能(2015.03.05)