困った。
いままでに何度も文庫の解説を書いてきたけど、この本の解説は難しい。難しいうえに、もどかしい。
こんなに面白いのに、その面白さをどう伝えていいのかがわからない。それがもどかしくてしょうがない。疾走しようと飛び出すと、足がもつれて転倒してしまいそうだ。
たまにそういう作品に出会う。つい最近だと、チョン・ミョングァンの暴力的で猥雑で、滑稽で残酷で、深く切ない長編小説『鯨』。かなり前の作品だとガルシア・マルケスの『百年の孤独』とドノソの『夜のみだらな鳥』、はるか昔の作品だと、アルベール・カミュの『異邦人』、さらに昔だと、フランツ・カフカの『城』や『審判』、もっともっと昔だと、メルヴィルの『白鯨』。このリストにこっそりもうひとつ入れるとしたら、ジョルジュ・バタイユの『目玉の話』だろうか。
いったい、なんで、何が楽しくて、何が悲しくて、こんな作品を書いたんですかと作者に聞きたくなってしまう作品に、ごくまれに出会う。
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