書評

過激で過剰、痛快で悲惨……とにかく無類に面白い! 予測不能のジェットコースター小説

文: 金原 瑞人 (翻訳家)

『番犬は庭を守る』(岩井 俊二)

『番犬は庭を守る』(岩井 俊二)

 激しい喚声の中、対戦が始まった。イセネットは最後まで観ていることが出来なかった。試合の最中、鳥かごから逃げ出したのか、あるいは放置されていたのか、一羽の白い鶏がイセネットの足許を横切った。最初二羽かと思った。しかし身体はひとつだった。双頭の鶏。

 いや、二つの頭の下に、更に小さい頭がもうひとつ‥‥。

 イセネットは気絶した。

 

 こんな事件が縁で、ふたりは好き合ってしまい、ここからウマソーの奇妙な冒険が始まる。ただ、冒険といっても、大海原に漕ぎ出すわけでもなく、前人未踏の地に踏み入るわけでもない。この世界にふさわしく姑息でしょぼいけど、死と危険だけはふんだんに盛りこまれた冒険だ。

 いざベッドインにおよんで、イセネットが目にしたのはウマソーの「ネズミの子供のようなふにゃふにゃした小さな」ペニスだった。しかしそんなことにひるむイセネットではない。ウマソーのDNAを混ぜたクローン豚を作って、ウマソーにペニスを五倍近くにする手術を受けさせる。そして見事、大きなペニスを備えたウマソーが誕生する。ところが、イセネット、今度は「豚のペニス」に二の足を踏む。

「何言ってるんスか! お嬢さんが手術しろって言ったんじゃないスか!」とウマソーが激怒していると、娘の不品行に激怒した父親が銃を持ってやってきて、ウマソーは命からがら逃亡。

番犬は庭を守る岩井俊二

定価:本体740円+税発売日:2020年01月04日


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