書評

あなたの上司に読ませて欲しい! 人望も展望もある「理想の上司」とは?

文: 高成田 享 (ジャーナリスト)

『世襲人事』(高杉 良)

『世襲人事』(高杉 良)

 親の跡を継ぐだけなら、帝王学を学ぶことでよかったかもしれない。しかし、古い体質の保険会社を改革し、会社を発展させていくには、親を乗り越えなければならない。支社長としての「理想の上司」物語は、自分をいじめ抜き、生保マンとしての自分を鍛えることで、同族経営を乗り超えようとする「父殺し」の物語でもあった。

 支社長を一年余で本社に戻された厳太郎は企業保険部長として保険業の国際化に取り組む。米国の保険会社との間で、お互いの取引企業が相手国でビジネスをするときに、相手と保険契約を結ぶよう誘導するとともに、その保険は再保険の形にして両社で折半する、という業務提携を結ぶことに成功する。この提携をきっかけに欧州の保険会社とのネットワークも広げ、日本の保険会社として多角的な海外ビジネスの先鞭をつけた。商社マンだった厳太郎の面目躍如というところだ。

 日本の生保会社が巨額の運用資産を背景に、国際金融市場を動かす機関投資家として登場し、ザ・セイホと呼ばれるようになったのは一九八〇年代後半のことだ。厳太郎はザ・セイホの足がかりをつくったともいえる。

 厳太郎が国際化戦略の次に手掛けたのは、法人営業部をつくることだった。企業から団体保険の契約を取ってくるのは支部・支社の外務員の役割だが、保険会社が顧客企業の株式を保有したり、融資をしたり、さらには不動産投資などで提携したりといった総合金融会社に転換していくには、法人営業部の設置が不可欠だった。

世襲人事高杉 良

定価:本体750円+税発売日:2020年01月04日


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