藤沢周平原作のオリジナル時代劇『帰郷』(
最初にこの『帰郷』という作品のお話をいただいた時は、脚本がまだ仕上がっていない段階だったので、まず先に文庫本を買って読ませていただきました。普段から時代小説はよく読みますが、なかでも藤沢周平先生の作品は何年かおきに必ず読みたくなります。決してハッピーなものばかりではないですけれど、私にとってはそういうところも好ましいというか、藤沢先生の書かれたものには、自分の中にきちんと入れておきたい何かがあるような気がしています。だからこそ、主人公の宇之吉を演じた仲代達矢さんも、ずっと『帰郷』をやってみたいと考えていらしたんじゃないでしょうか。
かつて信州・木曾福島を縄張りにしていた博奕打ちの宇之吉は、親分の罪を被って江戸へ逃れる。しかしある深い事情から江戸を出奔することとなり、以来三十余年。病に倒れた宇之吉はようやく帰ってきた故郷で、いったい何を見たのか―昭和四十七年「オール讀物」十二月号に掲載された、藤沢周平の短篇「帰郷」(文春文庫『又蔵の火』所収)は、初期の代表的傑作として読み継がれてきた。
『切腹』『影武者』『乱』など日本を代表する名優・仲代達矢も本作を敬愛するひとり。「いつか宇之吉を演りたい」という長年の想いが、時代劇専門チャンネルの制作により遂に実現した。仲代はもちろん、三田佳子、橋爪功、中村敦夫といった大ベテランらも出演する豪華キャストの中、常盤が演じるのは、宇之吉のかつての恋人・お秋(前田亜季)の一人娘。父親の顔を知らずに育ち、母はその帰りを待ち続けて死んだ。さらに恋人の源太(緒形直人)は、九蔵(中村敦夫)一味に追われ姿を眩ましている。
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