カンヌで体験した万国共通の感動
昨年十月には国内に先立って、カンヌの国際映像コンテンツ見本市MIPCOMでもアジアの作品としては史上初めてワールドプレミア上映され、私も杉田監督、佐藤二朗さんと一緒に、着物でレッドカーペットに立たせていただきました。観客の方の反応って万国共通なんですね。父と娘の情愛もそうだし、橋爪さんと仲代さんが旧交を何十年ぶりかに温める場面、(中村)敦夫さんとの積年のライバル関係もそうだし、どの国の人々にとっても心を揺り動かすものは変わらないのが印象的でした。
カンヌでは8Kでの上映も見ることができたのですが、4Kの映像と比べても伝わるものが全然違うなという印象があり、目に見えない人の感情など、本質的なものが見えてしまうように感じています。だからこそ、演じる私たちもをつけないし、本気で挑むしかないなと。
仲代さんが演じる宇之吉、敦夫さんの演じる九蔵の最後の死闘は、殺陣のすごさは言うまでもないんですが、殺し合いのシーンにもかかわらず、面白く思えてしまう。お二人のキャリアのなせる技というか、あのご年齢に達した方でないと、あそこまでの域には辿り着けないと思います。一生懸命やっているがゆえ、本当に究極のコミカルなシーンで、誰もが「いったい生きるって!?」と人生を考えさせられずにはいられない名場面です。
三田佳子さんも「この作品には絶対に出たいと思ったの」とおっしゃっていた言葉通り、すごく格好いい。宇之吉の放浪の原因をつくったおとし役の田中美里さんも女の情念が怖いけれど、すごく素敵ですしね。そして何よりも仲代さんという存在感の大きさ、迫力をぜひ劇場でご覧になっていただけたらと思います。
(オール讀物2月号より転載)
ときわたかこ 一九七二年神奈川県生まれ。九一年ドラマ「イブは初恋のように」で女優デビュー。二〇〇五年映画『赤い月』で日本アカデミー賞優秀主演女優賞。二〇年NHKBSプレミアム「贋作 男はつらいよ」ほかTV・映画出演多数。
オリジナル時代劇『帰郷』は時代劇専門チャンネルにて2月8日(土)夜9時放送。
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