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常盤貴子 藤沢周平の『帰郷』に 魅せられて

常盤貴子 藤沢周平の『帰郷』に 魅せられて

「オール讀物」編集部

特別インタビュー

出典 : #オール讀物
ジャンル : #小説

 本作のメガホンをとったのは、ドラマ『北の国から』で知られる杉田成道監督である。二〇一五年にはやはり藤沢周平原作、仲代達矢主演『果し合い』をオリジナル時代劇として制作し、国内のみならず海外でも高い評価を得た。今回は原作の舞台として描かれている、木曾福島の雄大な自然を背景とすべく現地ロケが敢行され、史上初の8K技術映像での撮影も実現した。

 東京国際映画祭の舞台挨拶で、若き日の宇之吉を演じた北村一輝さんも「本当の鬼は笑っている」とおっしゃっていましたが、杉田監督はニコニコ、ニコニコしながら、すべてに関して決してあきらめないんです。撮影時は八十六歳だった仲代さんが身体を使わなければならない場面でも、「はいもう一度」と淡々としている。出演している俳優全員に等しく、誰かを楽させてあげようというようなこともなく、みんなに対して平等に絶対あきらめないものだから、逆にこちらも覚悟が決まりましたね(笑)。

 私がいちばん何度も撮ったのは、去っていく仲代さんに向かって叫ぶシーンです。周りのみなさんは「そんなに本気でやらなくても大丈夫だよ」「もう喉を傷めるから」と心配してくださるんですけど、加減した時の映像が使われたら嫌ですし、たぶん杉田監督はそれを許さない。もうやるしかないと思ったわけですけれど、本当にあの山の中で何回撮り続けたか分からないです。

 でも、一方で監督は時間をゆったり使ってくださって、急かせるようなことは決してしない。木曾福島という宿場町を流れる時間がかつて緩やかだったように、『帰郷』という物語も時がゆっくり流れている感じがするのは、杉田監督が作ってくださるリズムが影響していたように思います。映画のようにワンカット、ワンカットずつ撮影していくわけではなく、ある程度の場面(尺)を続けて撮る。もともと監督がテレビご出身というベースの部分があるのかもしれませんが、私自身にとってはそれもやりやすかったですね。

文春文庫
又蔵の火
藤沢周平

定価:682円(税込)発売日:2006年04月07日

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