西日を浴びていたということは、僕は軽音楽部(以下・軽音)のライブハウスの中には入らず、外から聴いていたということだ。ライブハウスといっても、三面しか壁のない開けっぴろげの箱で、催事用のテントにコンパネの壁をくくりつけただけの、吹けば飛ぶようなシロモノである。その狭い箱の中にノリノリの客がぎっしり詰まっているわけで、その中に入っていける心境ではまったくなかったのだ。
具体的な旋律は忘れてしまったが、どんな雰囲気の音楽だったかは覚えている。当時はまったく音楽に疎かったけれど、今なら多少ジャンルも特定できる。あの全体的にだらしない南国調は、おそらくレゲエの影響。しかしパーカッションはアフリカン・ドラムを基調に、よくわからない様々な民族楽器を叩いたり擦ったり弾いたりしていて、当時流行りのワールド・ミュージックへの指向があった。さらにボーカルの歌い方や歌詞は、日本のおちゃらけたコミック・バンド風――なんせバンド名は〈鼻毛ちょうむすび〉だったから。
要するにいろいろなものをゴチャ混ぜにした、敷居の低い音楽だった。何よりもやっている本人たちが楽しんでいることを前面に押し出した類の。
こちらもおすすめ
プレゼント
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。