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小さな案内人が誘う「異世界」へ――作者による“おかしな”解説の試み

小さな案内人が誘う「異世界」へ――作者による“おかしな”解説の試み

吉田 篤弘

『ガリヴァーの帽子』(吉田 篤弘)

出典 : #文春文庫
ジャンル : #エンタメ・ミステリ

『ガリヴァーの帽子』(吉田 篤弘)

 と、こんなことを書いてしまった以上、いずれ自分が、日本とガリヴァーとの関係を、こちら側から描いたものを書くことになるのだろうと、このあとがきを書きながらぼんやり考えています。

 人は自らの思いを文章に書くことによって、少しずつ現実──もしくは実現でしょうか──に近づいていると経験的にそう思います。

 その証拠に、二〇一三年に単行本として上梓された本書には、その末尾に、「ではまた、七年後にあとがきでお会いしましょう」とあります。そんなことは、書いた本人も文藝春秋の編集者の皆さんもすっかり忘れてしまい、たまたま、「そろそろ文庫にしましょうか」と作業を始めたところ、最後にこんな一行にぶつかって、はじめて指折り数えてみたわけです。

 すると、こうして、この文庫版が刊行されるのが、単行本からまさに七年目にあたることに気づきました。この「七年」はこちらの意図ではなく、あたかも、こうなることが決められていたように、偶然の成り行きでこうなったのです。

 あるいは、偶然ではなく、すでに書かれているシナリオどおりに事が運んでいるのかもしれません。

 物語は、もう始まっているのです。

文春文庫
ガリヴァーの帽子
吉田篤弘

定価:770円(税込)発売日:2020年03月10日

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