という具合に物語は後半に入っていくのだが、ここから先では、また別の楡周平が顔を出す。一九九六年のデビュー作『Cの福音』で悪のヒーロー朝倉恭介を誕生させ、朝倉が冴えた頭脳で日米を繫ぐコカイン密輸を軌道に乗せる様を描いて一躍ベストセラー作家の仲間入りをした、あの楡周平だ。そう、本書後半では、楡周平が操る登場人物たちが、それぞれの専門技能を活かして、ある“プラン”を進めていく刺激が、たっぷりと味わえるのである。有り体にいえば「読者よ、喜べ!」だ。
本書ではそのプラン遂行が、プロボノという人材確保/斡旋のメカニズムと一体になっている点も嬉しい。こうすることで、前半の企業小説と後半の犯罪小説(犯罪すれすれだが)が、ひとつの物語としてしっかりと結びつくのである。しかも、前半で読者が大岡と共有した心労が、後半において推進力あるいは爆発力として十二分に活かされている。いやはや素晴らしい。
さらにいえば、ターゲットの粘り腰も物語の読み応えを倍増させている。なにしろへこたれないのだ。傲岸不遜で厚顔無恥でへこたれずしぶとい。良心も良識も皆無。ある意味で無敵だ。だからこそ(エンターテインメント小説として描かれる)闘いを、読み手は存分に愉しむことができるのである。
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