■『ぷろぼの』
『ぷろぼの』。
二〇一七年に楡周平が発表した小説である。楡周平はこの後、フードビジネスを題材に企業経営を語る『国士』(一七年八月)、ネット通販のアキレス腱である物流システムを巡るテロ行為を描く『バルス』(一八年四月)、一九五〇年代に横浜のドヤで当たり屋をしていた少年がビジネスマンとして成長していく様を日本の変化とともに描く『TEN』(一八年九月)、新型ウィルスの脅威を政治や学術研究や五輪開催と絡めて語ったパンデミック・サスペンス『サリエルの命題』(一九年六月)、鉄道輸出を題材に日本の未来を考える『鉄の楽園』(一九年九月)、介護と安楽死を掘り下げた『終の盟約』(二〇年二月)など、実に様々なタイプの小説を矢継ぎ早に発表している。なかでも『国士』(『プラチナタウン』『和僑』に連なる一冊)や『バルス』は、企業と雇用(あるいはフランチャイズ制)の関係や冷酷な企業経営がモチーフとして登場しており、本書読者にも関心を持って(なおかつワクワクドキドキしながら)読み進んで戴けるだろう。
それにしても、一九五七年生まれの著者だが、その勢いは全く衰えていない。これらの作品においては、本書で語られた首切りをはじめとする現実の問題を解決するアイディアが少なからず盛り込まれているし、小説として取りあげる材料も新鮮だ。まさに驚異と呼ぶべき作家活動なのである。
そんな楡周平が、“現実”と“作り話”をほどよくブレンドした一作が、この『ぷろぼの』である。繰り返しになるが、読後感はよい。『MY LINK』に集う面々とまたどこかで会いたいものである。
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