「何が可笑しいんだよ」
「ううん。祐仁と同級生でよかった」
「あのな慧斗、感慨に耽るのは終わってからにしろって」
彼は床のガラクタを蹴散らし、車椅子を広げて置いた。
茜がわたしたちを交互に見つめていた。顔に浮かんでいる表情は恐怖ではなく、疑念に変わっていた。
「同級生……?」
「そう。同じ学校の同じクラス。生徒はそんなに多くないけど、毎日楽しいよ」
「生徒? 学校?」
答えようとしてわたしは思い止まった。茜は学校に通わせてもらっていない。おそらく光明が丘に来る前からだ。彼女はずっと、邪教の檻に監禁されていたのだ。
だから逃がす。脱出させる。解き放ってみせる。
今はその第一歩だ。でも第一歩に過ぎないのだ。
自然と気が引き締まった。緊張が身体を走り抜けた。
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