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娯楽小説の真似をして書いてみたが、こうして思い出し、書き綴るだけで心臓が縮み上がる。手は汗ばみ、胃袋が持ち上がる。あの頃のわたしは幼く、無謀だった。もっと穏便な手はあったはずだ。誰も傷付けることなく、誰も血を流すことなく茜を助け出す手が。
だが子供のわたしには思い付けなかった。
わたしがしたことは決して偉業などではなかった。称讃を受けるに値しない。むしろ愚行だった。これを読むあなたは、決してその点を勘違いしないでほしい。だが、この経験がいまのわたしを、わたしたちを形成したことは間違いない。
だから余すことなく記そう。事実を。真実を。
わたしがどのような経緯で飯田茜と出会ったかを。如何にして彼女の置かれている状況を知り、助け出そうとしたかを。
結果、わたしたちがどうなったかを。
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