ようやく辿り着いた廊下が、酷く長く感じられた。いつの間にか真夜中のように暗くなっている。そんなに時間が経ったのか。さすがに大人たちが帰ってくるのではないか。この瞬間にも。
出し抜けに玄関ドアが開いた。
息を呑んで立ち止まる。狭い廊下に身を隠す場所はなく、ただ腰を落とすことしかできない。
「遅いよ、もう」
ドアの隙間から顔を覗かせたのは、朋美だった。泣いているような怒っているような顔だった。
「早く出ろ、出ろって」
苛立ちを隠さずにドアを開け放つ。
わたしはほんの少しだけ安堵しながら、家を飛び出した。祐仁が車椅子を押しながら後に続く。
茜は顔を引き攣らせていた。青ざめてもいた。完全に気を許したわけではないのが見て取れた。それでもその表情は、初めて会った時より晴れやかに見えた――
こちらもおすすめ
プレゼント
-
『赤毛のアン論』松本侑子・著
ただいまこちらの本をプレゼントしております。奮ってご応募ください。
応募期間 2024/11/20~2024/11/28 賞品 『赤毛のアン論』松本侑子・著 5名様 ※プレゼントの応募には、本の話メールマガジンの登録が必要です。