五輪中継に命を懸けた和田信賢の物語を通じて、人生の意味を考える。
和田信賢は、体調を心配してくれる同僚たちにこう語る。
「オリンピックの放送だけは何としてもやり遂げるんだ。たとえ、この命と引き換えにしても!」
命を賭けて仕事に取り組むことを、「単純な美談」としてはいけないかもしれない。
だが、「賭けるもの」を見つけた、突き進む和田の姿は、読む人の心をひきつけてやまない。
「私は普段、登場させるキャラクターを突き放して小説を書いています。警察小説では、殺人事件もおきますから、感情移入していると、そのときに登場人物を死なせたりできないですからね。でも、今回は違いました。実在した和田さんが放つ魅力は圧倒的で、執筆中に何度も、『人生とは何か』と考えていました。
和田さんが残した日記には、すべての心情は記されていませんでしたが、小説として、その思いには迫ることができたのではないかと思っています」
1952年のヘルシンキ・オリンピックが開催された当時、日本は、戦後復興の真っ只中。ラジオから降り注ぐ和田信賢の声が、そして競泳選手・古橋廣之進らアスリートたちの活躍が、日本人を励ましたのだろう。
新型コロナウィルスに立ち向かう時代だからこそ、「スポーツが持つ物語」の力が、私たちを勇気づけてくれるのではないだろうか。
DOBA2020 プロジェクトについて
「東京オリンピックは延期にはなりましたが、スポーツも小説も、人に『力』を与えてくれます。開催に向けて再び関心が高まっていく中、4冊の小説でスポーツが内包する様々な要素を描き出していきます。どうぞこの機会に、観るだけではなく、『読みながら』スポーツについて一緒に考えてみませんか」(堂場瞬一)
『チームⅢ』(実業之日本社)、『空の声』(文藝春秋)、『ダブル・トライ』(講談社・2020年5月刊)、『ホーム』(集英社・2020年6月刊)を連続刊行します。
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『赤毛のアン論』松本侑子・著
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