インタビューほか

<松井今朝子インタビュー>江戸中が熱狂した初代を知れば、歌舞伎役者「市川團十郎」がわかる!

オール讀物編集部

『江戸の夢びらき』(松井 今朝子)

かねてよりメディア露出の高い市川海老蔵が、歌舞伎界の大名跡「市川團十郎」を継ぐにあたっては、ファンならずとも大きな関心が寄せられている。残念ながら襲名披露公演は延期となってしまったが、江戸の元禄時代から脈々と受け継がれる「團十郎」とはいったい何なのか? 初代團十郎の一代記『江戸の夢びらき』の著者・松井今朝子さんに話を伺った。


『江戸の夢びらき』(松井 今朝子)

――13代目市川團十郎白猿を市川海老蔵さんが襲名されるわけですが、改めてこの襲名に注目が集まる理由はどこにあるのでしょうか。

松井 まず役者が「何代目」を名乗るのは何のメリットがあるのかを考えてみましょう。今でこそ歌舞伎は古典芸能なので、何代も続いている名跡が非常に有難く感じられますけど、初代團十郎の活躍した元禄時代、歌舞伎は最先端の芸能だったわけで、そこで「2代目」を名乗っても、何だか偽者とかそっくりさんのような感じがしますよね(笑)。実際、2代目には単なるそっくりさんもいて、仮に実子であっても最初はオヤジのそっくりさんが出てきたという感じで売りだしていたようです。

 ただ團十郎の場合は2代目が偉大だったので、團十郎のネームヴァリューがますます上がったということが言えます。さらに代々の襲名の経緯というのは、割といい加減なところもあり、まったく関係ない人が継いだりすることも度々ありますが、團十郎に関してはこの人が継ぐのであれば間違いないという役者が比較的多く出て続いてきました。ことに4代、5代、7代、9代は時代を代表するような名優で、歌舞伎という劇壇内で大変な力を持ちます。特に明治時代の9代目の團十郎が、近代歌舞伎の劇壇に君臨したことで、團十郎の名跡が揺るぎないものになりました。また11代團十郎の襲名は、戦後の日本社会を明るくしたイベントで、私もその舞台は何度か観ています。

13代目市川團十郎城猿を襲名する市川海老蔵。長男の堀越勸玄は8代目市川新之助を同時に襲名する。
江戸の夢びらき松井今朝子

定価:本体1,900円+税発売日:2020年04月24日


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