悪友で、やはり町名主の跡取り、清十郎さんは、浮世絵を参考にして涼しげな顔立ちに。この八木家は、清十郎の義母であるお由有さんもきっと美形だろうし、お父さんも美形だろうし。で、描くのが意外と大変でした。私が作画するカロリーをたくさん使うんです、美形の方々には(笑)。
麻之助の許嫁、お寿ずは、原作で「明るい紅の朝顔のようで、夏の朝を思わせる人」と書かれていたのがとても印象的だったので、凜として、きりっとした顔にしました。その瞳で真っ直ぐ見つめられると「本当のこと」をすべて射抜かれる様な、そんなお嬢さん。私はそんなお寿ずのことをよく覚えていて、先のシリーズを拝読しても、麻之助が彼女を思い出すたびに、自分が漫画で描いた彼女の瞳が眼前に浮かびます。
絵に描くまで、原作を何度も何度も読み返しました。畠中先生が文字で書かれたまんまことの世界を、余すところなく絵に表したくて。本はボロボロになってカバーもなくなりました。「万年、青いやつ」に出てくる万年青(おもと)(ユリ科の常緑多年草)。「艶があり、なかなかいい一品」とか「葉脈に沿って葉の表面が盛り上がっている」とさらっと書かれているのを、どう漫画にするか。万年青の写真や資料をいくつも見て、研究しました。
そうそう、髷(まげ)もたくさん種類があるんですが、麻之助の頃は、月代(さかやき)が広くて、髷が細いのが流行りだったんです。当時に生きておしゃれを気にする部分が麻之助や清十郎さんにもあったでしょうから、江戸の流行を自然に取り入れたいと思いました。
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