
描いている間も、小説はどんどん先に進んでいたので、麻之助とお寿ずにどういう運命が待ち受けているのか、ということは分かっていました。だから漫画をどう締めるか、については、とても悩みました。最終巻の「あとがき」にも書きましたが、人間の運命はいつどうなるか分からない。悲しみがずっと残ることもあれば、癒されることもある。未来のことを暗示させることも必要ですが、作中の「今」を生きている人たちがそれに引きずられてはいけないと思いました。感情の機微が細かく書かれていることが魅力の小説でしたので。なので私は、この先二人に何があるかを、二人自身はわかっていないけれど、ただ確実にその瞬間だけは二人の幸福と結びついていたであろう『結納』の場面を、華やかに盛り上げて描いてあげたいと思いました。そしてすっぱり終わらせました。
今回久しぶりに「まんまこと」シリーズを読みましたが、畠中先生が、毎回どうやって事件を考えていらっしゃるのかなあと思います。続きを小説で読むと、麻之助が、結構ずーっっと傷の癒し方に悩んでいる。漫画で三年くらい彼と向き合ってきましたが、ああ、すぐに立ち直れる人ではないんだなあ、と納得感がすごくあります。作家側として早く救ってあげたくなるところを、小説では畠中先生がゆっくりゆっくり、書いていることで、麻之助が本当に繊細な人なんだと、心に残ります。
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