- 2020.08.27
- インタビュー・対談
その「苦しみ」が未来をつくる――住野よる×松本穂香、もがく二人の青春対談
聞き手: 別冊文藝春秋
映画『青くて痛くて脆い』公開記念(別冊文藝春秋 電子版33号)
住野 そのときから女優になる、という強い意志をお持ちだったんですか。
松本 あこがれは持っていました。それに、飽きっぽい私が会社員になって毎日出勤するなんて出来るかな? という不安もあったので、思いきって挑戦してみようと。幸いオーディションは一度落ちてもまた受ければいいですしね。
住野 演劇部のその子とはその後どうなりましたか。
松本 その時は意地になってしまっていたのですが……しばらくはオーディションに行っていることも秘密にしていました。どうにか作品に出られるかも、というところまで行ったときに「実はね」と打ち明けて。
住野 いいですね(笑)。
松本 オーディションの帰り道、大阪に帰る新幹線の中から電話して。無茶苦茶ですよね……。
住野 いいエピソードですね(笑)。その子はいったいどんなお返事を?
松本 「へえ、すごいね」というような当たり障りのない会話だったような気がします。
住野 その子がどんな言葉を飲み込んだのか、すごく気になりますし、描いてみたい。そのリアクションにも万感の思いがこもっていそうです。
松本 本当にそうです。いま振り返ると、いろんな感情が渦巻いていました。高校生だからこそそんな行動をしてしまったんじゃないかなと。住野さんはいつ小説家になろうと思われましたか?
住野 いまのエピソードの後だとものすごくつまらない話になりますけど(笑)、高校生の時から書き始めて、大学生のときプロになろうと思いました。実際にプロになるまで、だいたい十年くらいかかりました。
松本 小説家ってどんな風にしてなるんでしょう?
住野 何かの新人賞を獲ってデビューというのが一般的かもしれませんが、僕はちょっと特殊なルートなんです。というのは、新人賞に応募しても全部一次選考で落とされ続けていて、「僕は小説家になれる人間じゃないんだ」ってだんだん自信を失っていって……。そんなときに、『君の膵臓をたべたい』という話をネットにアップしたら、編集者さんが声をかけてくださって。横入りしてプロになった感じなので、いまでも常に、明日には全読者さんが僕のことを忘れてしまうんじゃないかと不安を感じています。
松本 わかります! 私もオーディションには落ちまくっていたので(笑)。
住野 落とされるときって、身を切られるような痛みじゃないですか。
松本 本当に悔しいですよね。私は、いつも泣きながらお母さんに電話してました。
住野 そういうときお母さんは何と?
松本 そんなにつらいなら早く実家に帰ってきなさいって(笑)。
住野 いいご家族ですね。僕はひとりで、じっとその痛みに耐えてました……。ただただ心が痛いんですよ。
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