- 2020.08.27
- インタビュー・対談
その「苦しみ」が未来をつくる――住野よる×松本穂香、もがく二人の青春対談
聞き手: 別冊文藝春秋
映画『青くて痛くて脆い』公開記念(別冊文藝春秋 電子版33号)
住野 自作が映画化されるときは、どんなふうに映像化されるんだろうと、いつも楽しみと不安がないまぜになります。『青くて痛くて脆い』は、観終わった後にちゃんと『青くて痛くて脆い』だなと思ったんです。それは松本さんをはじめとする役者さんたちの力がすごく大きかった。原作と設定が変わっていないのが、楓と秋好、ポンちゃんと董介なんですが、原作者が見てもこの四人は、確かにそこに実在していると思えました。
松本 そう言っていただく以上の嬉しさはないですね。私もこの物語が好きで、特に終わり方がすごくいいなと思いました。ラストシーンで結論を出すんじゃなくて、その先に何が起こるんだろう、と観ている人の想像力を刺激する物語は面白いです。
住野 僕は元々楓を擁護してたんですが、映画を観て、楓のことが嫌いになりましたね(笑)。
松本 ええっ、なぜですか?
住野 先日吉沢亮さんとお話ししていたんですが、楓って基本的に全て自己が中心なんですよね。
松本 それはわかります。ネタバレになるので詳しくは言いませんが、「楓、ふざけるな」と思ったところはありました(笑)。一方で、楓の気持ちをわかる自分もいるんですよね。自意識を持て余した結果、極端な行動に出てしまうこともあったり……。
住野 例えばどんなことですか。
松本 高校生のとき、目立ちたくなくて、極力人と関わらないようにしているのに、文化祭ではしゃいでいろんな人に声をかけたことがありました。もうずいぶん時間が経っているのに、いまだに恥ずかしい思い出です(笑)。
住野 そういう経験をお持ちだったんですね。他人との関係を避けつつも、どこかで人と繋がっていたいという思いも捨てきれないのが、楓のジレンマなのかもしれません。
松本 登場人物それぞれの心情に心当たりがあるので、一人一人の未来を想像しちゃいます。
住野 映画を観て、ポンちゃんと董介がさらに好きになって新たに二人のことを描きたくなりました。とにかく松本さんと董介を演じる岡山天音さんの距離感が絶妙で。董介の家でタコパ(たこ焼きパーティー)をするじゃないですか。たぶんみんなの注意は滔々としゃべっている楓にいっていると思うんですけど、その横でそっとポンちゃんがハイボール(らしきもの)を作って董介に渡していた。そのときの、ただの先輩後輩でもなければ恋人でもないという、二人の空気感が最高によかった。
松本 そんなシーンがありましたっけ(笑)。たぶんアドリブで演じたんだと思うんですが、そんな風に受け取っていただけると嬉しいです。天音さんはどんな演技をしても打ち返してくれるので、安心してぶつかっていけました。その雰囲気が出ていたのかもしれませんね。すごくお芝居が好きな方で、尊敬する先輩です。
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