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実は、ナイルもインダスもドナウも、実は「川」という意味だった。地名の謎がこの1冊でわかる!

実は、ナイルもインダスもドナウも、実は「川」という意味だった。地名の謎がこの1冊でわかる!

21世紀研究会

『カラー新版 地名の世界地図』(21世紀研究会)

出典 : #文春新書
ジャンル : #ノンフィクション

『カラー新版 地名の世界地図』(21世紀研究会)

 歴史上、思いも寄らない展開をみせた地名もある。

 古代ギリシャ人は、言葉の通じない異国の野蛮な民族のことをバルバロイとよんだ。現在、北アフリカに分布するベルベル人は、そうよばれた人びとの歴史を、民族名として受けついでいる。そしてこの蔑称ともいえる言葉は、三~四世紀の絶世の美女と伝えられる処女殉教者バルバラの名になる。異国に布教する困難の物語が、この美女によって演出されたとも考えられる。しかもこの名のたどる道筋はそれだけでは終わらなかった。キリスト教がヨーロッパに、海を越えて新大陸アメリカに伝わるうちに、野蛮人がいつしか美しい聖女のイメージに転化したのだ。そしてこの名は、さらに意外なものの名前として今日にいたっている。バーバラという女性名の愛称でよばれ、子どもに夢を与えるおもちゃ、バービー人形である。

 ときに地名は、楽しい時間旅行もさせてくれる。たとえば、「フランスのパリをリムジンに乗って旅をした」といえば、オシャレな街を高級車に乗って優雅に観光旅行をした、というイメージだろう。ところが、これが二〇〇〇年前だとしたら……「槍投げが巧みな種族が住む国、そのなかのパリシィ人の町を、ケープ付きのマントを羽織った御者が操る個室仕様の馬車に乗って移動した」ということになってしまう(なぜかについては、本書『カラー新版 地名の世界地図』一一四~一一五頁をごらんいただきたい)。

 ユニークなところでは、マダガスカル島や西インド諸島のように、探検家マルコ・ポーロの聞き違いや、コロンブスの誤解によってそう名づけられてしまった所もある。さらには、オーストラリアがもともとは古代ギリシャの想像上の大陸名だったこと、しかもこの国が、ある時期まではニューオランダとよばれていたことを思うと、地名は歴史についての不思議な感慨を私たちによびおこしてくれる。

 地名は、道路のかたわらに立つ単なる標識ではない。それは何千年にもわたる人間の営みの、すべてが眠るタイムカプセルなのである。


(「はじめに」より)

文春新書
カラー新版 地名の世界地図
21世紀研究会

定価:1,485円(税込)発売日:2020年09月18日

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