司会 井浦さん、どうでしたか。
井浦 ふたりでキョロキョロしながら、これは二人になってないといけないんだよね、とか小さい声で話してました。
河瀬 温泉入ったあとは着替えるんですか? って衣装部から聞かれましたが「浴衣に決まってるやん、お風呂に入ってるんやから」と(答えました)。
井浦 浴衣も用意されているし、「どういうことなんだろう」と思ってましたね。
司会 井浦さんは役積みで印象に残っていることは?
例えば、NPO法人「ベビーバトン」の説明会で特別養子縁組を希望する人たちに浅田さんが説明をするシーンがありますが、あそこは周りにいる方はどう見ても実際に特別養子縁組をした人たちじゃないかというシーンがあります。あのシーンはどきどきしながら見てました。
井浦 あのシーンは二人ともドキドキしてましたね。台本だと、セリフがほぼ一つもなく、設定だけが書かれているんです。そこに僕たち二人は行くわけです。で、説明会が突然始まるんですよ。
河瀬 それは、不安がそのまま出るからいいのよ。
司会 監督にはドキュメンタリーを撮っている感覚がどこかであるのかと思いましたが。
河瀬 本物の人たちの中に俳優が入るというのは、違和感が生まれるわけです。そこを観客が見ても違和感を持たないくらい馴染んでもらわないといけないんです。そこに行くまでの導線、たとえば商店街を歩いてくるとかもやってもらいます。
司会 そういう意味では、あそこの代表をやっている浅田さんは馴染んでましたね。
浅田 私はベビーバトンをきちんと分かっていないといけないので、もう撮影に入るまでは受験勉強のように資料があって、いろんな方とお会いしました。質問もいつ誰から何が来るか分からないので全部把握してないといけないんですね。いま聞かれてもすぐに答えられます。
司会 蒔田さんはいかがでしたか。
蒔田 家族と三週間近く一緒に住んでました。お母さん(役の人)が、本当に衣装を洗濯しちゃったり、「お風呂入って」と怒られたりしました。その期間で出来上がった関係性が映画の中に映っていると思いました。
司会 お父さんとお母さんは、蒔田さんを妊娠させた彼氏役の家に行って謝っているんですって?
蒔田 私は知らなかったです。
河瀬 私は後ろをつけて行きましたけどね。
司会 親御さんは相手の家に行って「別れてくれ」というシーンをカメラなしでいっているんですか。台本には書いてあったんですか?
河瀬 ないです。だってふつう行くでしょ? 行って、その話の中から、行く前と後では両親の感情が変わるんですよ。
司会 それを想像してやるのが俳優かと思ってました。
河瀬 けど、想像を超える現実ってありますからね。彼氏の両親は素人で私の友達です。
司会 実際には出てこない人ですものね。監督、後ろで見ながら、このシーン撮っておけばよかったと思いませんでしたか?
河瀬 思いましたよ。それは何かというと、彼氏の巧はその話し合いに入ってこれなくて、階段の端っこで聞いているのね。体育すわりをして泣きながら聞いてるの。
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