全国のミステリーファンのみなさま、こんにちは!
いよいよ年末、各社のミステリーベストテンが書店を賑わせる季節になってきました。話題作が目白押しで、「読み切れない!」と、うれしい悲鳴を上げている方も多いのではないでしょうか。
この「文春ミステリーチャンネル」は、文藝春秋が毎月刊行している書籍・雑誌の中から「ミステリー(推理小説)」に特化した新作情報を月イチ発信していきます。どうか読み逃しがありませんように、チェックリストとして活用してください。
【単行本】
□折原一『傍聴者』
世田谷一家殺人事件、東電OL事件など実在の事件にヒントをえて本格ミステリーを構築してきた折原一さんの「○○者」シリーズ。6年ぶりの新作となる『傍聴者』が下敷きにするのは、木嶋佳苗の首都圏連続不審死事件です。練炭による一酸化炭素中毒に見せかけて交際相手を殺害した罪に問われた牧村花音。被害者たちとのセックスを赤裸々に語る彼女の裁判は“花音劇場”と化していました。裁判を傍聴する4人の女性たち、親友の死の真相を探ろうと花音に近づくうち彼女に惹かれていくジャーナリスト――。真相を追えば追うほど深まる謎に翻弄される悦びを味わってください!
【文春文庫】
□ジェフリー・ディーヴァー『スティール・キス』上下(池田真紀子訳)
□伊岡瞬『赤い砂』
□月村了衛『コルトM1847羽衣』
□円居挽『キングレオの帰還』
□櫛木理宇『鵜頭川村事件』
□矢月秀作『刑事学校III 卒業』
秋といえば「どんでん返しの帝王」ディーヴァーの季節。『スティール・キス』は、科学捜査の天才リンカーン・ライムが「殺人マシーン」を相手に死闘を繰り広げる、シリーズ屈指の傑作です! ショッピングセンターのエスカレーターが誤作動を起こし、歯車に巻き込まれた男性が死ぬ痛ましい事故が発生。やがて機械の不具合は人為的に仕組まれたものでは? との疑いが生じ、恐るべき連続殺人の幕が開きます。身のまわりにある機械や家電が、何者かの悪意によって暴走し、人を死に至らしめるというのですから、こんなに恐ろしい話はありません。衝撃の展開、驚くべき真犯人の正体に、震えること必至です。
男が電車に飛び込み自殺し、現場検証にあたった警察の鑑識係も同僚の拳銃を奪って自殺、電車の運転手も自殺し、拳銃を奪われた警察官までが飛び降り自殺――。不可解きわまる自殺の連鎖が、未知のウイルスによるものだとしたら? 『代償』『悪寒』『祈り』が話題の伊岡さんが文庫オリジナル作品として緊急出版した『赤い砂』は、まさにいま読まれなくてはならない傑作といえるでしょう。親友の死の真相を追う若き刑事の奮闘ぶりにも注目です。
「週刊文春」連載中から「面白すぎる!」と話題を呼んだ月村さんの『コルトM1847羽衣』は、幕末の日本を舞台に、女渡世人の羽衣お炎が暴れまくります。失踪した思い人・青峰信三郎が佐渡の金山にいるとの情報を得、相棒のコルトM1847(銃身の長い大型拳銃)を携えて島に潜入したお炎。金山の内奥で「オドロ様」を信仰する邪教が広まっていることを知るお炎に、謎の刺客が迫ります。信三郎はどこに? 「オドロ様」とは何か? 佐渡金山に隠された謎にいどむお炎の戦いは、ガンアクションの楽しさとエスピオナージュのスリルに満ち満ちた、前代未聞の読み心地です!
現代日本を舞台に描かれた“ホームズ・パスティーシュ”の注目作が、円居さんの「キングレオ」シリーズです。毎回ホームズの正典にちなんだオマージュ的な事件が起こるのがお約束で、最新刊『キングレオの帰還』の目次に並ぶ「町屋の冒険」「ふな屋敷」「性根の曲がった男」といった題名にニヤリとするファンの方は多いはず。『キングレオの冒険』『キングレオの回想』と続いてきたシリーズもいよいよ完結。本家同様、名探偵キングレオは前作で失踪してしまうのですが、相棒の助手は心の傷を癒やすため、なんと探偵「AIキングレオ」を製作。久しぶりに帰還した名探偵は、過去の自分をもとに作られたAIと推理合戦を繰り広げることになるのです!
櫛木さんの『鵜頭川村事件』は、山あいの村を舞台にした戦慄のパニックサスペンスです。舞台は昭和54年。墓参のため、幼い娘をつれて亡妻の故郷を訪れた岩森は、突如、豪雨に見舞われ、土砂崩れによってお約束のように村内に閉じ込められます。古い村では血縁による分断と権力闘争が存在し、加えて旧弊な上の世代と青年との世代間の確執も……。豪雨の中、ひとりの若者の死をきっかけに、暴動と殺戮が広がっていく描写はリアルそのもの。ロッキード事件や学生運動など、昭和54年の時代性が物語に深く影を落としているのも読みどころです。果たして岩森は、幼い娘を守りながら狂乱の村を脱出できるのでしょうか? WOWOWでの連続ドラマ化も決定しました!
大分県警刑事部刑事企画課刑事研修所――若き警察官が刑事になるための研修を受ける、通称「刑事学校」が物語の舞台。シリーズ3作目となる『刑事学校III 卒業』では、最後の研修としてとんでもない課題が出されます。教官の畑中は、中津市内で発生した息子による母親殺しを、研修生6人だけで捜査、解決するよう命じるのです。刑事見習いの6人がそれぞれの個性を生かし、力を合わせて捜査を進めていく過程には、ベテラン刑事の警察小説とはひと味ちがう新鮮な感動があります。もちろん意外な真相も! 研修生のみならず教官の畑中も超強烈な個性の持ち主で、『刑事学校』『刑事学校II 愚犯』と、遡って読んでいただきたいおすすめシリーズです。
【オール讀物】
□西村京太郎「石北本線 殺人の記憶」(最終回)
新型コロナウイルス蔓延下の連続殺人をいち早く描いた衝撃の連載が、ついに最終回! 真犯人の正体には誰もが驚愕するはずです。いずれ1冊の本として刊行されますが、ミステリーの驚きを雑誌連載で味わうスタイルも楽しいものです。90歳の大ベテラン、西村京太郎さんの「石北本線 殺人の記憶」は、「オール讀物」2020年5月号~12月号に掲載されています。
以上8作、駆け足でご紹介しました。
ミステリーは私たちの大切な友人です。本欄では、毎月、ミステリーの「いま」を感じられる作品をどんどんご紹介していきます!
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『リーダーの言葉力』文藝春秋・編
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